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三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年10月08日
三原 淳雄

災い転じて福と為す
 

 中学生のころ若い先生が新しい憲法について、さも得意気に「日本は非武装で世界に範を垂れるのだ」と例の憲法の前文を教えてくれたことがある。あの「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と言う有名な前文である。 
 
 子供心にこれを聞いて「こいつは馬鹿か」と吃驚して飛び上がり「僕は満州からの引揚者なんですが、あんな国に公正と信義があると先生は考えるのですか、ボクにはとてもそうは思えないのですが」と反論して大騒ぎとなり、次の生徒会会長選では先生方が「あいつだけは落とせ」とやられて落選したことがある。 
 
 「三原は右翼」なんだそうだ。あれから60年、この前文が脈々と生き続けているために、日本国民の生命と財産の安全は他国に委ねられたままの状態が続いている。それでも冷戦時代のようにアメリカが強ければ、一蓮托生という立場はあったのだが、そのアメリカが頼りなくなったし、子供心にあんな国と心配していた国がいよいよ本性を剥き出してきた。 
 
 このことは何も安全保障ばかりとは限らない。いつの間にか「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」という癖だけはしっかり根付いているから、ビジネスでも言いがかりをつけられると反論すらしなくなったように、中国などでは泣き寝入りしているケースも山ほどあるし、アメリカだって因縁に近い訴訟をどかどか起こされては負けっ放し。 
 「泣くこと地頭には勝てない」という故事のDNAがまた生き返ったようだ。 
 
 また円が高くなってきた。これまた自虐的に「円高で日本は潰れる」みたいな論調が目立つが、対ドル、対ユーロにという先進国内での円高であり、資源国に対しては大して強くなっていない。レアアースの中国による嫌がらせが話題となっているが、幸い円高なんだからいまこそ「諸国民の公正と信義を信頼して」鉱山ごと買ってしまえばいいではないか。公正と信義とは相手が困っている時には助けてくれることのはず。 
 
 何ならアフガニスタンの鉱山も中国と一緒に共同開発したらいい。日本と中国の鉱山開発をアメリカ軍がタリバンから護ってくれるなんて、これこそ「諸国民の公正と信義を信頼」すれば出来ることだ。出来なければこの際憲法の前文を丸ごと削除し、ついでに憲法も見直すべきだろう。折角の円高が生かせないのにもったいないではないか。 
 他にもアメリカの農地、オーストラリアの鉱山、ブドウ畑、中国のレアース、ロシアの油田など、公正と信義を表に出して買いまくってみてはどうだろう。そして初めてどこの国にも公正や信義などないし、あるのは国家のエゴという現実に気付くだろう。 
 
 折角の円高を武器にもう土下座外交からキッパリと縁を切り、通貨の強い独立国としてのプライドを世界に示めそうではないか。 
 発想を180度変えてみれば、新しい世界も見えてくるし拓けてくるもの。 
 「災い転じて福と為す」にはいい機会である。