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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年08月06日
三原 淳雄

ハゲタカさんいらっしゃい
 

 長期金利がとうとう1%割れ、日本の景気はよくなるどころか悪くなると市場は読んでいるのであろう。50年間にわたって市場を見てきたが、こんなに投資家マインドが冷え込んで、株への関心が急速に薄れたのは初めてである。 
 
 ひところは週刊誌をはじめ書店にも株式投資に関する雑誌や本が溢れていたが、このところめっきり減っているし、株式市場そのものも呑み会などの話題にのぼらなくなった。株への関心が高いころは話題の中心にいつも居たものだが、この頃は末席で小さくなっている。またもし聞かれてもこれを買っておけなどと言える株も少なくなっているのも事実だし、午前中はNY、午後はアジアと他の市場に振り回されている東証だから、自主性を失った市場の話をするのは難しい。 
 
 株式投資は本来「成長性」と「安定性」が投資家を魅きつける要因なのだが、成長は新興国に、安定は社債、国債に取って替えられ、企業価値を計る物差しも日本の株式ではなく他の国の物差しに移ってしまった感がある。 
 
 企業の懸命な頑張りで企業業績は必ずしも悪くない。4〜6月期では最終利益は9倍にも伸びたにもかかわらず、株価は一向に反応しない。つまり投資家は日本株には全く関心がなくなったのだろう。 
 デフレ下では苦労して株など買うより、低金利でも国債を買っておけば労せずして実質利回りは3%近くなる。そのため昔はあれほど熱狂していた投資家が一斉に洞ヶ峠にこもってしまったのかも知れない。 
 
 おまけに政策不在、迷走も加わって円はいいように投機筋の餌食にされている。 
 こんな政情不安の国の通貨は本来売られるはず。何故高くなるのだなんてぼやいたとしても、政情不安だからこそ、その隙をついてくる投機資金のターゲットになると説明されて、それで何となく納得するのも不思議な話ではある。 
 
 市民運動家の首相が唱える成長戦略も、よく見れば政府が決めた分野に国が金を出すものばかりで、むしろ規制が強化されて民間が縛られそうなものばかり。これでは強い経済、強い市場にはなれそうにもない。 
 だから市場から投資家が去り、閑古鳥が舞うという状態になるのだろうが、やはりここは企業の経営者にもう一段の頑張り期待したいものである。 
 
 あの60億キロを旅して帰ってきた「はやぶさ」は、日本に「誇りと自信」そして「夢と希望」を与えてくれた。 
 やる気になればアホな政治家の「何故一番にならなければいけないのですが、2番では駄目ですか」なんて戯言に惑わされることなく、「夢と希望」に向けて前進出来る力がこの国にはまだあるのではないか。 
 
 アップルの時価総額が20兆円で、日立のそれが一兆五千億円なのに、誰も疑問に思わないのもどこかおかしい。もし日立をM&Aで買収することが出来れば、その元手は2年もあれば回収出来るほど割安とか聞いた。 
 
 最近ハゲタカという言葉も聞かれなくなったが、ハゲタカにも見放された国になったのかと、何だか淋しくなってくる。 
 せめてハゲタカでも飛んで来て、騒ぎを起こしてくれないかな。世の中静か過ぎるより賑やかな方が活気が出ていいと思うのだが。