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三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年07月16日
三原 淳雄

キレイゴトですむ時代か!!
 

 町並みも服装もキレイで安全ということに関しては、日本とスイスが双璧だろう。 
 ところがキレイゴトになると話は違ってくる。「清貧」「潔白」「正直」などキレイゴトが表面に出てきて、自分には出来なくとも他人には求めたがるのが日本。 
 街はキレイだし表面的には紳士だが、その実排他的で金儲けがうまいのがスイスといった具合に民族性は異なる。 
 また汚なくったて平気、他人のことなど構っていられないという国民も近くにウジャウジャいる。 
 
 このごろはさっぱり耳にしなくなったが、とかくキレイゴトが好きな日本ではカネは異端視され、そのせいだろう、ひところ「マネー敗戦」という言葉をよく耳にしたし、そんなタイトルの本も売れていた。 
 太平洋戦争は、精神力や兵隊の勇敢さでは勝っていた日本が、アメリカの豊富なモノ、物資に負けたように、今度はマネーは豊富にあったのに、アメリカの金融力や狡猾さに日本はうまくやられ負けたというのがマネー敗戦の謂れである。 
 
 日本はいつも日本が酷い目に遭うのも他人のせいという自虐的で受身の話にすり替わる。「自分は悪くない、あいつのモノやずるさに負けた」との言い訳が好きなのだろう。 
 自らの敗因を冷静に分析することなく、全て自分にはない相手方の何かによって負けたとするこのての感情論はどこから出てくるのだろう。 
 
 マネー敗戦と言う言葉などその典型である。1990年までの日本はマネーでは敗戦どころかひとり勝ちの大国だった。株も土地もいまの中国が真っ青になるほど値上がりしていたし、いまの中国人同様に世界中でブランド品や不動産を買っては、ついでに顰蹙まで買っていたほど元気がよかった。中国人も顔負けの元気があった。 
 まるで太平洋戦争のミッドウェイ海戦で負けるまでの勝ち戦みたいで連戦連勝、向うところ敵なしだったのである。 
 
 ところがバブルが崩壊した途端に一転してキレイゴトが大手を振ってまかり通るようになり、地価の下落は経済正常化への正しい道とか、株価の下落は不労所得を減少させるので、不労所得で稼ぐ奴がやられるだけで結構ではないかといった暴論が支配的となった。このキレイゴトにより自らが招いた失われた十年〜二十年を、いまだにまだアメリカの金融至上主義にやられた、中国のクルクル変わる法律や国民性に騙されたとか、全てが他人のせい。 
 
 ミッドウェイ海戦の敗因も失われた20年も、キレイゴトで済ませてきたツケが回ってきたのであり、何故そうなったのか、自分は正しかったのか、自分が言っていたことに間違いはなかったのかなどと反省、自省する声は殆ど出てこない。自民党のせい、民主党のせいなど、まだ他人のせいにしているのが好例である。マネー敗戦など自虐的なことを言っているから負けるのである。 
 
 まだ日本にはカネもあるしヒトも技術も豊富である。どうしたらマネー勝利作戦を立てるか、そんな時にいつも出て来る金持ち優遇はけしからんというキレイゴトをどう封じるか、頑張って成功した人をどう称えるかなどまずやってみようではないか。 
 目の黒いうちにアメリカや中国に「うまく日本にしてやられた」とギャフンと言わせる日本を見てみたいものである。EUにもNATOにも入らず孤高を保ってしぶとく生き抜いているスイスの知恵も学んでみる時だろう。