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キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2010年03月26日
三原 淳雄

知恵の時代
 

 あのマイクロソフトの創業者 ビル ゲイツ氏が今度は東芝と組んで原子力発電に挑戦するらしい。いよいよ本格的なグローバルな知恵の時代の始まりである。 
 これまではグローバル化とは言っても、外国で工場を作って外国で売るとか、日本から外国株や投信を買うとか、主としてモノ、カネ、技術の国際的な移動が主だったが、いよいよ「知恵」と「技術」そして個人の「資金」が本格的に組むというグローバル本番の動きになってきたようだ。 
 
 「知恵」とは本来最も価値があるはずなのだが、なかなか計量化し難い。 
 そのためとかく日本では知恵は評価され難い。手で触れ、目で見ることが出来る、といったものには対価を喜んで払うのに、ヒトの知恵やプロのサービスなどに対する評価が、他の国に比べて低く評価されがちとなっている。 
 
 もともと日本も戦後しばらくの間は「もの真似」からスタートし、そのため日本の輸出品も「安かろう、悪かろう」というのが世界の評判だった。1970年に初めてロスのリトルトーキョウを訪れたら、ブリキで出来た安物の玩具がまだ商品の棚に並べられて売られていて、何とMAID IN OCCUPIED JAPAN(占領下の日本)となっていた。日本も50年前はそんな状態だったのである。しかしその後物真似で得た知識を知恵に代えることで、いつの間にか日本の工業製品は、世界でいちばん品質が高いという評判を得ていったのである。 
 ところがもの真似からスタートしたためか、肝心な「知恵」の部分に対するガードが甘くなり、いまやコピー商品を作らせたら本物より凄いと言われている中国に、まんまと乗っ取られてしまった。如何に彼らが知恵にたけている民族かを忘れていたのであろう。 
 
 金型をはじめ日本の誇る技術や知恵が、グローバル化の波のなかで次々と中国に移転されていった結果、あろうことか「もの作り」ではこれまで世界一を誇っていた工作機械の生産が、遂に中国に抜かれドイツにも後塵を拝して3位になってしまった。 
 「いつまでもあると思うな親とカネ」ではないが、油断しているとトップの座も同様に必ず抜かれてしまうのである。

自分の知恵つくりに投資してみては

 その日本の落ち目を象徴するかのように、このところ日本株より外国の株に投資する動きが加速しているようだ。いよいよ日本の市場も投資家に見放されはじめたかと思うと淋しい気にもなるが、いまやグローバルな時代なのだから「知恵」の働かせ場所はいくらでもある。当然な動きだろう。 
 
 法人税をいつまでも世界で最も高いままにして放ったらかしている知恵のない国だから、せめてカネだけは「知恵」を働かせる国へと投資するのも投資家の「知恵」なのだろうと思う。(日本語の情報だけに頼るのはリスクが高いのだが。) 
 残念ながら国内の政争しか眼中にない日本の政府には、「知恵」などあるはずもない。ないものねだりがおち。 
 こんな政府も政府だがそれでもまだ、日本は大丈夫と根拠のない楽観にすがっている知恵の足りない国民が多いのも事実。 
 
 しかしグローバル化は日本の国民の意識などとは関係なく進む。日産がダイムラーベンツと組んだり、東芝がビル ゲイツ氏と組んだりと、それなりに「知恵」を出して頑張りはじめた企業も多い。 
 いまは日本に拘っているよりも、もっと視野を広くして「知恵」を働かす時だし、また「知恵」のある日本の企業を応援する時だ。それには経営者の資質を見ることだろう。 
 日本電産の永守さん、東芝の西田さん、それにユニクロの柳井さん、信越化学の金川さんなど、まだまだ日本も捨てたものではない。 
 
 前号でも触れたが、これまでハーバード大学を卒業した日本人は何人いるか、ご存知だろうか。 
 明治以来約3000人だそうだ。 ところが今年の新入生はたった一人とか。 
 目先でちょろちょろネットで小遣い稼ぎをするのも結構だが、若いヒトには時間という何よりの味方がある。この際自分に投資して自分の値段を高くすることを考えてみてはどうだろう。いまの日本には外向きの人間が少ないだけに、逆張りのチャンではないのだろうか。グローバルな時代にはせめて英語ぐらいは身につけておかなければ、大きな知恵は出てこないだろう。 
 
 ところで株価の上昇で僅かながら個人金融資産が増えたそうだ。ご同慶の至りだがこれを機に市場は国民共有の大切な財産であることを改めて考えてほしいものだ。 
 バブルと言われている中国はもとより、もうダメと言われたアメリカでも株は上がっている。中国人や、アメリカ人はさぞ嬉しいだろう。 
 デフレで落ち込む市場より、バブルで浮かれる方が楽しいと思うのだが・・・・。 
何故か自虐的だなあ、この国は。 
 いまは絶好の逆張り(コントラリアン)の時ではないか。