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プロフィール
三原淳雄
 

2010年02月26日
三原 淳雄

諜略(?)なき国家
 

 戦術はタクティック、戦略はストラテジィ、ここまでは馴染みがあるし、よく「ゲームに負けて試合に勝った」、つまり戦術は下手だったが戦略としてはうまくいったという使われ方が多い。 
 
 今回のトヨタ騒動をみていてつくづく感じているが、日本のメディアは表面を騒ぐだけ。つまり戦術の稚拙をあげつらっているだけで、戦略をどうするかなどには関心がないようだ。もちろんトヨタの対応が旧来の日本の発展パターンの時代をそのまま踏襲し、社内の人事も垂直型のままだから若殿大事が真っ先にきて、結果として対応が遅れ世論を怒らせてしまったということはある。戦略としては間違えたということになるが、もうひとつ、これはなかなか日本語になり難いが(ぜひご教示いただきたい)英語にコンスピラシイ(CONSPIRACY)という言葉がある。乱暴に訳せば陰謀だが、もっと謀りごとを周到に巡らした感じのニュアンスがある。 
 
 諜報と戦略を合わせた諜略とでも訳せればいいのだが、生憎辞書には諜略という言葉が見当たらない。「こちらが胸襟を開けば向こうも解ってくれる」とか「謙譲の美徳」「惻隠の情」なんて優しい言葉がある日本には、ひょっとしたら最も不得意なことだから、そんな言葉すらないのかも知れないが、アメリカや中国にはこんな日本的な思考はまず通用しないだろう。 
 一歩譲れば2歩踏み込んでくるし、うっかり「アイム ソーリー」なんて言おうものなら全ての責任を被せられ、全損害はこっちもちとなるのがおち。 
 
 今回のトヨタのケースは80年代のジャパン バッシングとは異なるが、あんな単純な反日本製品といった感情の爆発ではないことがむしろ気になる。オバマ政府は明らかに来るべき電気自動車(EV)の時代に焦点を合わせているし、エンジンでは完敗したアメリカが、モーターやバッテリーで巻き返しを図ってくるのは自明の理であり、既にデトロイトにはベンチャービジネスがEVの試作車をどんどん作っているし、あのGMも十数台の試作車をテストしているらしい。 
 したたかなアメリカのこと、これ幸いと敵失につけ込みトヨタをスケープゴートにしながら、次のEVの時代に向けて何か策略を巡らしているとも考えられる。 
 しかも今回うまく立ち回れば高品質が誇りの日本の工業製品、ひいては日本の「ものづくり神話」にもダメージを与え評判を落とすきっかけに出来るかもしれないと、様々なCONSPIRACYを巡らせている可能性もある。 そうでなくとも単に優秀な製品を作るだけではグローバルな競争に負け始めているのではないか。アラブ首長国では韓国の大統領以下総出のセールスで原発は持っていかれたし、ベトナムでは日本勢が勝つと言われていた原発も、ロシアの軍事援助をセットにしたプロジェクトにあえなく敗退している。 
 
 グローバルな競争に勝つには個々の企業努力ではどうにもならないプロジェクトがある。にもかかわらず日本の政府の対応は全くなっとらん。人気取りに都内の小学校などをてれてれと回って歌など唱っている暇があったら、もっと民間と協力して日本のセールスマンになるのも政府・首相の仕事だろう。 
 
 その昔日本の首相がフランスのドゴール大統領から「トランジスタのセールスマン」と揶揄されたことがあるが、だからこそ日本のエレクトロニクス産業は世界に覇を唱えることが出来たのである。「友愛」なんて国民が豊かに暮らしていけてこそ初めて言えるのであり、こんな体たらくで「友愛」なんてほざいている場合ではない。国民の生命が大事なら国民を喰わせてくれている日本の企業をもっと応援したらどうだ。ことは単にトヨタだけの問題ではない。 
 
 トヨタが大きな利益を出した時の法人税は、日本人ではなくトヨタ車を買ったアメリカ人たちが払ってくれていたのである。そのアメリカで火の手が上がっているのだから、少しは火消しの努力でもしたらどうだ。この間抜けめが!