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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年12月06日
三原 淳雄

金持ちになるのは悪か
 

 やっと日経平均が1万円台を回復してきた。それでもまだ時価総額は300兆円、20年前の半分でしかない。バブルは潰せ、金持ちの足は引っ張れ、格差は是正しろと20年かけてやってきたおかげで日本の富は株だけで半分、土地も多分まだ20年前の半分だろう。 
 その20年前中国はまだ人民服を着て自転車の洪水、株式市場もマンションも無かったのだからえらい違いである。4000年も昔から親は子供に「金持ちになれ」と教育し、自分の代で駄目なら子供、それも駄目なら孫といった具合にタダひたすら金を求めるしぶとさがある。 
 そのしぶとさを「中華思想」というひともいるが、身内しか信じないし、政府など全く当てにしなかった中国人が、再び世界の中心へと踊り出てきた。海ひとつ隔てただけでえらいことになってきた。根性が違う。そのバイタリテイーたるや凄いものがあり、たった20年前には無しに等しかった株式市場はいまや東京に迫ってきた。時価総額で追い抜かれるのも時間の問題だろう。 
 毛沢東時代には車は党の要人しか乗れなかったのに、いまや中国のモーターショウへの出品車は東京モーターショウの5倍とか。それでもまだ日本は懲りずに相変わらず馬鹿な政府を当てにして、その政府に振り回されているのではとても太刀打ちできる相手ではなくなってきた。 
 自民も民主もろくなものではないことを判っていながら、国におんぶに抱っこしてきたつけが回ってきたのである。かれこれ40年も昔になるがアメリカに住んでいたころは、日本の政治は駄目だが日本人はしっかりしていると、アメリカ人によくお世辞を言われたものだが、このごろはその日本人も駄目になったようで心配である。何故心配しているかといえば「考える」ことを止めてしまったように思えるからである。今さえ無事に過ごせればいい、何とかやっていけるのだから「そのうち何とかなるだろう」ムードが溢れ、つまらないことに腹を立てたり、モーニングショウを無邪気に信じたり、そのため深く物事を考えるのは苦手になったのでは、何が何でも金持ちなると必死に働く中国人にはやられっぱなしなるのがおち。困ったことだ。 
いま日本の親で子供に何が何でも金持ちになれという教育を子供にしている家庭があるだろうか?多分皆無だろうし、むしろ逆に「子供が金の話などするものではない」と封じ込めているのでは無いか。だから東京市場も金持ちが博打をする場と考えるようになり、参加者も投資家ではなくトレーダーばかりになり規模も年々縮小してしまった。もったいないことだ。折角大きな株式市場があるのに株式市場は国民共有の大切な財産であるという、もっとも大事な知識が欠落しているために宝の持ち腐れになっているのはまことに残念である。 
 立派な市場があるのだからこの市場を活用して、この際みんなで金持ちになる方法を考えてみようではないか。夢でもいいから株式市場の時価総額が1000兆円になったときの日本を想像してみてはどうだろうか。いまの3倍にするにはどんな政策や税制が必要かについて真剣に考えてみたい。 
 政策や税制で支援すれば企業や経営者ももっと真剣にリスクに挑戦してくるだろうし、つれて投資家もトレーデイングばかりに精を出すのではなく、本格的なリスクキャピタルを提供してくるだろう。そうなれば金儲けに異議を唱えるのが正しいという今の風潮も変わってくるのでないか。いちど改めて世界の株式市場の時価総額を調べてみるといい。元気のいい国は何故元気がいいのかという、ごく当たり前のことに気がつくはずである。日に日に豊かになるのだから元気になるのは当たり前なのだが、どうも日本ではそこのところがいつまでたってもわかってもらえない。 
 1000兆円は国民一人あたりで約1000万円の資産を持つ計算になる。そうなればいまの年金や医療に対する考え方も変わってくるだろうし、打つ手もいくらでも出てくる。もちろんそのためには企業に頑張ってもらわなければ、株価が上がるはずもないのは当たり前だから、法人税を下げるとか外資を優遇するといった政策面での支援は欠かせないのだが、さていまのような企業いじめが正義といった世論や政策をどうするか。まず中国にでも行ってしっかり目を開いて彼らの強かさを学んでくるのも一法だろう。そういえばあのアメリカも一時は「日本に学べ」と言っていたような覚えがあるが、すっかり覇気まで吸い取られてしまったのは残念である。