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三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年10月15日
三原 淳雄

ハブは大賛成
 

 しがらみがない人間は流石いいことをいうものだ。前回で公共と私権について私見を述べたが、前原大臣がリトマス試験的な話題を早速提供してくれた。 
 羽田空港をハブ空港にしたいという彼の発言は大きな反響を呼んでいるが、もっともっと議論したらいい。 
 あの成田空港の一坪地主にもぜひ意見を言わせて見るといい。いまになって羽田のハブ化に反対だと言ったって、成田すらハブ空港にさせなかったのは誰なのか、長いものに巻かれて中途半端なまま開港した責任は誰が取るのか。 
 空港が出来るのも反対、出来た後の不便を解消する移転も反対ではどこかおかしいと子供でもわかるだろう。 
 いまや世界の趨勢は空港も港湾も巨大なハブ化をすることで、人も物も引き寄せようとしている中で、日本だけが人にも物にも不便を与えているようでは、相手にされなくなるのは当たり前だろう。 
 盛り場とは人も物もカネも集まってくるから盛り場になるのだが、不便な場所が盛り場になれるわけも無い。たまには海外を見たいし、また見ていないと書くのにも話すのにも「迫力」を欠くため、定点観測の意味も含めて出かけたいとは思っても、成田までの厄介さ(神奈川県から)を思うとつい億劫になり止めてしまったこともある。 
 もし空港が便利だったら、去年のウォール街には真っ先にひょいと出かけただろうが、成田と考えただけで憂鬱になり止めてしまった。あれが羽田なら多分出かけただろう。港も然りでいまや巨大化したコンテナ船が入れる港は日本にはない、釜山やシンガポールに取られてしまった。あの中国は今躍起になって港湾作りに励んでいるので、早晩ハブ化した港が中国のあちらこちらに出来るのは時間の問題である。 
 貿易でこれまで喰ってきた日本が肝心な入り口も出口も他国に押さえられてやっていけるのだろうか。昔の盛り場でいま閑古鳥が鳴いている所が多いが、人が集まらなければ集まってくるのは閑古鳥となるのは当たり前だろう。 
 大阪の伊丹空港がどうなっているか、行ってみてくるといい。大きなネオンは無くなりターミナルもすいすい歩けるし、土産物屋も少なくなって雇用がなくなっている姿が実感できる。 
 千葉県知事が怒りまくっているが滑走路が増やせないという物理的な制約があるのだから、千葉県の事情もさることながらもっと国益も考えてみることだ。 
 これまで何百万人もの人に不便な思いをさせたのは確かだろう。 だいいち24時間使えなければハブ化なんて出来るはずもないではないか。グローバルな時代の世界には夜の国も昼の国もある。それを日本の時間に合わせて飛んで来いでは通用しないのは子供でもわかる。 
 『大の虫を生かして小の虫云々』(うんぬんと書かなければならないところがつらいが、書くと逆上する奴がいるので)というがこれがグローバルな世界の厳しいところであり、国益は自分のことよりまず公共の利益を優先してこそ成り立つのである。 
 先の戦争でなくなった方々のためにも、彼らが誇りに思えるような立派な国にしなければ何のために戦ったのか、それこそ死んでも死にきれまい。 
 この前原発言はその意味でなかなかに重いものがある。この際まず私益は横において、何が今の日本に欠けているかをいまこそ真剣に考える時ではないか。前原さんはその意味では平和ボケの日本にいい意味で一石を投じたのであろう。軽々に妥協することなく徹底的に議論を深めてもらいたい。