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キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年09月25日
三原 淳雄

アリとキリギリス
 

 日本中が政権交代とシャブ漬け夫婦の話題で盛り上がっていた9月のはじめに、「ニューズウイーク」日本版は「沈み行く日本」という特集を組んでいた。 
 サブタイトルは「成長戦略無き空っぽのマニフエスト、ビジョンなき政権選択でアジアの大国の座を守り抜けるのか」と、なかなか挑発的である。 
たしかに民主党のマニフエストには成長戦略は見当たらないし、子育てを支援したとしても、その子たちが成人したときの日本がどんな国になっているかについてはまったく描かれていない。ましてや成長戦略らしきものは全く見当らない。 
 これでは政権交代というリスクをとった国民が不安になるのも仕方が無いだろう。自民党が厭だからと交代させたい一心で、わざわざ投票所まで足を運んでいった結果政権がひっくり返り、民主党に転がり込む結果となった。そのリスクは国民にある。 
 だからこそ責任政党になった民主党には国民が将来に自信が持てるような成長戦略を、リスクを取った国民に対するリターンとしてきちんと示すべきである。それがないから外国の雑誌に「沈む国」などと揶揄され情けない記事を書かれてしまう。 
 これまで日本を誇りとしていた国民の一人としてなんともやりきれない。何よりも口惜しいし恥ずかしい。もともと日本はまだ貧しい明治の時代でも、国旗が示すように「日出ずる国」として世界に知られていたし、国民には誇りも気概もあった。 
 また政治家には「井戸塀政治家」と呼ばれるような私財を投じて国に尽くす人も居た。つまり私財を政治活動に使ってしまい、あとには井戸と塀しか残らないという意味の言葉であるが、これもいまや死語になり政党助成金やパーティで金集めが政治家の仕事になってしまっている。 
 これでは政策も目先の人気狙いとなり国家100年の大計など期待するほうが無理というもの。淋しいことだ。 
 いまでも海上自衛隊の軍艦(自衛艦なんて言葉遊びはしない。あれは紛れも無く軍艦である)には旭日旗が掲げられていると思うが、その旗は日出ずる国の威光があまねく世界に行き渡るという日本の気概を示しているのである。もう政治なんか当てにせず国が沈む前に、国民自ら自分たちで再び日出ずる国に変えていくしかない。 
 選挙の大勝に浮かれたのだろう、もうさっそく「借りた金は返すな」なんて国力も弁えずに乱暴な発言をする亀井さんみたいな大臣が出てきているのだから、この政権には多くは期待しない方がいい。 
 銀行を苛めて中小企業の味方をすれば、自分の人気が上がると考えているかもしれないが、世界的にみて日本の銀行は昔のような強さはもう無い。むしろこれからどんどん増資をして体力をつけなければ世界では戦えない状況であり、それも知らずに体力をむしろ衰弱させかねない政策しか思いつかない政権には、長期的な成長戦略なんて言葉はきっと無いのだろうとしか思えないのである。 
 その昔(30年以上前になるが)NYで働いていたころアメリカ人の友人に「プレイナウ ペイレイター」なんてキリギリスみたいに遊び暮らしているからアメリカは駄目になる。蟻さんのようにしっかり働きしっかりためている日本を見習ったらどうだと散々からかった覚えがある。 
 ところがこのニゥーズウイーク誌であのピータータスカさんが、今度は日本がキリギリスになってはどうだ、金だけは一杯持っているのだからどんどん使えば内需が活性化し、世界のほかの国からも喜ばれる。 
 これまでアメリカのキリギリスにさんざん世話になったのだから、今度は日本アリがキリギリスの技を磨く番だろうと、極めて興味深い提案をされているが、これならとくに政府に頼らずとも出来そうである。 
 もちろんそうした活動を支援する制度や税制は国が準備する必要があるが、過度に国に頼るのではなく自分たちでやるからあとは任してくれぐらいの気概が国民に無ければ、今度は海外の雑誌に「沈んでしまった日本」と書かれてしまうだろう。 
 浮くか沈むか、ハプニングで出来た政権に過度な期待はせずに、自分たちで成長路線を探す気持ちをまず持つことが必要だろう。いまはまだ日本には活かされていない資本や技術もある。もっと自信を持とうではないか。