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プロフィール
三原淳雄
 

2009年09月10日
三原 淳雄

意地悪な質問
 

 「去る者は日々に疎し」とはけだし名言だと、このところしきりにそう思う。その時はまるで地獄にでも落ちたような騒ぎとなっても、たちまち風化させてしまうのが人間の凄いところだろう。
 あの911からまだ10年もたっていないし、100年に一度の騒ぎになったあのリーマンショクからはたった一年、懲りない連中はいつの時代にもいるようで、震源地のアメリカでは再びトレーダーたちが目も眩むようなボーナスを貰うらしい。このアニマルスピリットこそ学ぶべきではないだろうか。
 既にウオール街周辺の高級レストランには客が戻り、馬鹿高いワインがばんばん売れているといった話題で世の中盛り上がっているが、911の現場はすぐそばにあるしリーマンのおかげで失業した人の多くはまだ職が見つかってはいない。
 もう景気は底を打ったという安堵感が支配しているようだが、トレーダーたちの馬鹿騒ぎのとばっちりを食らい、彼らのように馬鹿金も使わずまじめにじっとしていたのに、奴らのおかげで資産が吹っ飛んだ普通の資産家にとっては、すべて歴史の中の出来事として忘れられるのは、何とも釈然としない気持ちになるのは致し方あるまい。しかしそれが世の中、人生なのである。
 まるで去年のあの騒ぎは遠い昔のように、今はトレーダーや投資銀行のトップたちの高額報酬に歯止めを掛ける動きが当局者の間の大きな議論となっているし、今回のG20の財務大臣や中央銀行総裁会議の議題にもなっていた。これはこれで両刃の刃になる可能性もあり、なかなかに悩ましい問題でもある。
 違法な手段で稼いでいるのなら勿論厳しく罰せられて当然だが、リスクにチャレンジした結果の正当な報酬となるといくらが適当かはうっかりすると「角を矯めて牛を殺し」かねず、なかなかに悩ましいテーマである。
 最近若い金融記者と話す機会があり、『君ならどんな景気対策を考えるか?』と聞いたところ『富裕層にカネを使ってもらうこと』という返事が返ってきた。そこで『富裕層はどうして富裕層になれたのか。』と意地悪な質問をしたところ、『稼ぎから貯金をしたから』という答えが返ってきた。
 思わずのけぞったが、金融担当の記者でもこれだから、真面目といえば真面目だが、日本人にはいまも農耕民族の血が脈々と流れているようだ。
 人から富裕層と言われるようになるには月給からの貯金だけでなれるはずも無い。自分なりご先祖さまがどこかでリスクをとって、人と違うことにチャレンジしたから富が築けたはずなのだが(先祖代々都市部に土地を持っていれば話は別だが)、誰でも真面目に貯金をすれば富裕層になれると考えている人にとっては、アメリカのこのトレーダーたちの強欲さは許しがたいと思うだろう。
 しかし残念ながら彼らは法には触れていない。彼らにあるのはアニマルスピリットであり、今の日本が見習うとすればこいつらの飽くなきアニマルぶりであろう。
 マスコミは時として変な言葉を流行らせるが、いま話題の「草食系」はいまの日本の男の若者を表すけだし名言であり、これはいい得て妙なぴったりの言葉で思わず膝を打ちたくなった。対して女性は「肉食系」だそうだがいまや天下無敵の勝間女史や民主党の小沢ガールズを見る限り、うっかり近づくと取って喰われるのではないかと感じているのは私だけではあるまい。
 そういえば女に振られて逆上し刃物を振り回す男も増えているが、こいつらも草食系に入るだろう。よく昔の日本は良かった、元気があったというがそれは世の中にアニマルスピリットがあふれていたからである。学生はしょっちゅうデモをしていたし、海外へ雄飛したいと狭い日本から広い場を求める若者も多かった。いまや海外は遊学以外は嫌われているとか。
 昔の日本は出来るか出来ないか別として夢は誰もが持っていた。いまの若者がサラサラしているとすれば昔の若者はギラギラしていたし、それが若者の特権だったのだが、そのサラサラが嵩じて「無気力、無関心、無責任」的な世となり、911もリーマンも「もうそんなの関係ない」として風化させているのかもしれない。「やられたらやり返す」「悔しかったら見返す」のがアニマルスピリットなのだが、ウオール街のトレーダーやそいつらを懲りもせずにうまく利用する投資銀行が一方ではあるのだから、せめて口惜しさを忘れないぐらいの気概は持って欲しいものだ。
 貯金さえしていれば富裕層になれるほど世の中は甘くないのである。いまや日本は「肉食系」のお嬢様方にもっと頑張ってもらうしか無い日本の姿は、女をはじめ何にでも飛びかかっていたもと「肉食系」の典型だった身としては、何とも複雑な心境である。お兄ちゃんたちも頑張ってよ。
 松任谷由美の「あの日に帰りたい」という歌でも聴くか!!