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プロフィール
キャピタル・パートナーズ証券
三原淳雄はキャピタルパートナーズ証券の顧問を務めています。
 

2009年06月18日
三原 淳雄

台風の目か?
 

ご存じない人の方が多いかもしれないがIFAという制度がある。 
これはIndependent Financial  Adviser のことで、金融機関には所属せず独立して顧客のために、資産運用のアドバイスをしたり注文を受けたり出来る。そのためじっくり相談したい投資家には歓迎されているようだが、あるIFAの人から非常に興味深い話を聞いた。 
ご案内のように今回の金融危機によってバランスシートが劣化し、資本強化のために、いま金融機関は増資をしたり劣後債を発行したりしているが、なかでもこれまで全く証券には関心のなかったような人たちがそうした銀行の発行する劣後債に群がってきているとか。 
金額も数千万円から億単位まで結構大口の申し込みがあるらしい。そのため劣後債人気で予定より金額を増額して発行する銀行も出てきた。同じ銀行なのに預金にはほとんど金利らしい金利はつかないが、劣後債なら預金金利に比べ十倍以上の金利がつく。だからそちらに乗り換えるという動きなのだが、彼が心配していたのは債券と預金は全く違うことが判っているのだろうかということである。 
預金は1000万までは元本、利息とも保護されるが、劣後債はその字が示すように破綻したりしたら回収できる順番は一番後。最後の最後にまだ資産が残っていれば回収できるという代物。一般の債券とは違うのだが銀行なら大丈夫とわりと簡単に申し込んでくるらしい。 
 株も企業が破綻すればただの紙切れになるが、市場に上場していればどこかで売り抜けることが出来る。しかし劣後債は流動性に欠けるため、経営が悪化しても売り抜けることは容易ではないし、だいいち買い手も見つかるまい。 
リスクをとる投資家が増えるのは大いに歓迎だが、リスクがあるからこそ利回りも高いことを忘れないことだ。日本には人がうまくやっているから大丈夫といった根拠のない楽観が強いきらいがあり、いざ何事か起きると知らなかった、金返せという騒ぎになる。そしてメデイアも損した人に同情的になるがそんな騒ぎはもう見たくもない。よもや今回の劣後債がそんなことになるとは考えてはいないが,買う前に格付けくらいはチェックしておくべきだろう。  
 さて鳩山大臣と西川郵政会社社長との攻防戦は大臣の辞任ということになった。小泉、竹中組が大急ぎで作った郵政会社の社長に起用された西川さんの進める簡保の宿の売却がポイントになっているようだが、それよりもいまはそんな宿を無定見にボコボコ作ったのは誰で、どう責任を取ったのか、また取らせるのかをまず問うのが筋だろう。建てた連中はどこに行ったのだろう。この連中の言い分を聞いて、それからオリックスの件を議論するべきだし、身近かな郵便局員によると、西川さんが連れてきた連中が要職につき、プロパーの職員たちの意欲の低下もはなはだしいと聞く。 
どうもいまの日本は上滑りのどうでもいい小さなことを大きく騒ぎ過ぎる。もっと根本から見直すべき大事な問題が山ほどあるはず。景気もまだまだあやふやな状態であり、このまますんなりと回復というのはそうは問屋がおろすまい。むしろいまは台風の目に入ったようなもので、吹き返しがくる可能性もある。 
日本経済を飛行機に譬えれば4つのエンジン(消費、設備投資、外需、公共投資)のうち外需と生産に弱弱しい回復が見られる程度で、個人消費や設備投資と言ったエンジンはまだ動いていないので、低空飛行をしている段階だろう。投資はまだ上を向いているとは言えまい。また大幅な金融緩和がもたらした過剰流動性によって動き始めたリスクマネーが、原油や金など資源価格を押し上げつつあるのも気になる。何となくこれでいいのだ、と緊張感が薄れているようだがここは気を引き締めて楽観するのではなく、懐疑と警戒の目で見ておく必要があろう。