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プロフィール
三原淳雄
 

2009年04月24日
三原 淳雄

またも国を誤るかNHK
 

 マスコミは本来「社会の木鐸」としての役目がある。正しいと信じたことは飽くまで貫く姿勢、いわゆる不撓不羈の精神で報道すべきなのだが、いまのメディアの多くは世間に阿ね、売れそうなタネ、世間が喜びそうな材料を流すのが指名と勘違いしてしまっているようで全く情けない。 
 好例が19日夜のNHKスペシャル「マネー資本主義」である。 
 天下のNHKがカネと時間をふんだんに使って製作されるのが「スペシャル」番組だから、さぞ素晴らしい内容だろうと大いに期待したのだが、その中身は言語に絶する酷さで、何と居眠りしながら見てしまった。そこで思い出したのが土地バブル華やかなりし1990年代半ばに放映された「土地は誰のものか」という三夜連続の飛んでもない大スペシャル番組だった。 
 もう既に株価は高値から半分以下にも下がり、これからは土地の暴落すら心配されている時に「土地さえ下がれば経済は正常化する」をテーマにして三夜連続で放映された結果、土地はたちまち悪者とされ、不動産業者は全員悪人、そこにカネを貸す銀行もけしからんと世論は沸き立ち、日本中にバッシングの嵐が吹き荒れ、年収の5倍で都心に家が買えるころまで地価を下げろといった暴論が市民権を得て正論になってしまった。 
 番組そのものの製作意図が、初めから「土地価格の上昇が諸悪の根源」として焦点を当てていたので、何故高くなったのか、それはむしろ税制、制度が時代に即してなかったからではないかという肝心な点が抜けていた。貧しい日本から豊な日本に変わったのだから古い上着を捨て新しい上着を着せるべきだったのである。 
 当時の地価はもちろん飛んでもないところまで上昇していたのだから、異常であったのは確かだが、何故そうなったのかには原因がある。円高を抑えるために異常な低金利と金融緩和を進め、そのために金融機関は融資先を求めて世界中を走り回り、地銀までもロンドンやNYに支店を出して融資先を探していた。世界中のビルが日本勢によって買いまくられたのもこの時である。また国内でも土地神話をベースに土地の値上がりで相続税に絡む土地持ちに相続税対策として借金をさせ、そしてそのカネで新たな土地やビルを買わせ税を逃れさせるといった融資が盛んだった。 
 異常な地価の上昇は異常な金融政策や税制が原因だったのであるが、スペシャル番組では悪徳不動産業者や金融業者を槍玉に上げ、そのため庶民が家を買えなくなったことばかりが強調された。その結果総量規制という何とも無茶な行政指導による融資規制策が行われ、不動産市場にはカネが流れなくしたために、地価は暴落し不良債権は山積みとなり、そのため大不況となって結局は全員が苦しむ失われた十年につながっていったのである。その頃就職期を迎えた学生たちは就職難で可哀想な目にあい、結局定職につけぬまま、いまの派遣騒ぎにつながったのである。 
マネーは悪か、日本も悪か 
 今回のスペシャル番組も同様に、土地に代わってマネーが悪役というストーリーで組み立てられていて、マネーを扱う奴は全て悪人という前提で作ったようだ。 
 そのためわざわざアメリカまで出掛けたのに、当のアメリカでは誰も相手にしなくなったソロモンの迷経営者だったグッドフレンドを主役にするというお粗末さ。 
 かつてNYで働いたが、ソロモンブロザースは大変な投資銀行であり、トレーディングのあり方を大きく変えた立役者でもある。そのソロモンが今回の金融危機の発祥の地みたいな扱いとなり、おまけに金融商品も全て悪といった扱いは、余りにも一方的過ぎるのではなかろうか。MBSとCDOの違いすら判っていないのだから、勉強不足もいいところであり、ソロモンを取材するならソロモンで財を築き、いまはNY市長として年俸1ドルで社会のために働いているブルームバーグ(TVのブルームバークの創設者でもある)や、もっと面白いキャラクターを持つメリウェザーなどを取材すべきではなかったのか。 
 彼らを取材すればマネーを悪人扱いにはしなかっただろうから、もし意図的に取材を避けたとしたら、これは視聴者に対しても大変失礼な話である。事情を知らない視聴者はまんまとNHKの術中にはまり、これからもマネーは悪いもの汚いものとしてしか見なくなるだろうし、ましてや資本市場の担い手である投資銀行などは日本には不用だとなりかねない恐れもある。民放と異なり国民はNHKにはカネを払わせられているのだから、自分たちの勝手な思い込みで番組を作られてはたまったものではない。スペシャルと銘打つなら事前にもっと深い取材をしてから製作されるべきだろう。「土地は誰れのものか」なんてバカな番組を流し、その後日本を奈落の苦しみに落とした反省はないのか。 
 4月5日に放映された台湾に関する番組も酷いものだった。NHKはそんなに日本が嫌いなのかと、どこか狂ったとしか思えない。そんな日本が嫌いならどこか他の国で反日番組でも作って自分で食う道を探してはどうか。受信料で食わせて貰っているのだから、国を憂う番組や国を愛する番組を作るのが筋であり、妙に反日的な番組などを作るべきではなかろう。これだから若者たちはますます前途不安になるのである。 
 報道の軸足は公平、公正、中立、不撓不羈であり、大衆に阿ね思い込みで悪者作りをするのでは、結果として国を危うくする結果にしかならない。猛省を促したい。