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プロフィール
三原淳雄
 

2009年02月12日
三原 淳雄

さてどうするオバマさん
 

 金融安定化(救済)法案がいきなり難航し、オバマ政権はスタート早々苦しい場面となった。 
 財務長官となったガイトナー案は「バッドバンク」を設立し、不良債権をそこに棚上げして分離しようというプランだったが、思いがけぬ世論の反対と議会の対応に立ち往生している。プランそのものは悪くない。金融危機の元凶であるサブプライムローンを組み込んだ金融商品は、謂わば腐った蜜柑が入った蜜柑箱みたいなもので、中で何個腐っているのか見当がつかないので箱毎買う人がいない。 
 だから値がつかないのだが、この値の付け方が厄介なのである。 
 ガイトナー案は二兆ドル規模でバッドバンクを作る。そこに政府、FRB、民間の三者が資金を出して買い上げるというものだが、不当に安い価格で買えば売り手の金融機関の損失が増え、体力が弱って貸し出しも出来なくなり、肝心の住宅市場への資金も出せなくなる。だからと言って高く買えば、今度は政府の損失が増え納税者の負担が大きくなる。 
 まるで「こちらを立てればあちらが立たず」で、このままではオバマブームにも水を差しかねない雲行きとなってきた。 
 日本でも「幽霊の正体見たり枯れ尾花」との川柳があるように、恐いはずの幽霊も正体が見えなければ恐怖心も消えるもの。 
 その幽霊にも似たサブプライムローンがらみの金融商品を、バッドバンクという檻の中に取り敢えず閉じ込めようとしているのだが、この調子ではまだしばらく幽霊に悩まされそうだ。NY市場も冷たいもので、ガイトナー長官がプランを説明し始めた途端に下げ始め、説明が進めば進むほど失望も広がって大きく下げるという結果となってしまった。 
 オバマ大統領も「日本の失われた十五年の轍は踏むな」と、議会や国民にメッセージを送っているのだが、肝心な国民の反応が「強欲な金融機関なんか助けるな」といったトーンだから、国民感情はどこも同じのようだ。日本も金融危機に際して公的資金の投入が議論され始めたころは「銀行なんか助けるな」「悪い銀行は潰せ」「銀行員の月給は高すぎる」などなど、日頃の銀行への反感が剥き出しとなり、そのために公的資金の投入が遅れに遅れて結果としては100兆円以上にもなりやたら高くついたが、アメリカも同じような騒ぎとなりつつあるようだ。 
 今日も主要銀行のトップが米議会に呼ばれ、高額報酬をどう考えるのかなど、議員にぎりぎり苛められていたが、公的資金を入れれば上限50万ドルまでとサラリーが削られたら、優秀な人間はどんどん逃げ出すだろう。それではまるで日本と同じではないか。 
 そのバッドバンク構想には民間のヘッジファンドやディストレスファンド(いわぬるハゲタカ)にも参加を呼びかけているのだが、そのハゲタカですら「いまリスクをとっても、もし儲けたりしたら、国民の怒りを買いかねない」と逃げ腰になるくらい、今回の金融危機の元凶である金融商品や高給取りの金融機関への国民の反感は強い。 
 ガイトナー長官のブランでは2兆ドルのうち政府が三千五百億ドル、残りをFRBと民間で調達する予定だが、この調子では民間からの資金調達の見通しは明るくない。ということは幽霊退治にはまだまだ時間が必要だということになるだろうし、この種の問題は時間をかければかけるほど損失も大きくなる。 
 外科手術の場合一般には手術が成功すれば後は日にち(日数)が薬といわれるように、手術さえ終われば日増しに回復していくが、その手術が先送りになるのは不安のタネを先送りするのと同じ。しばらくはまだ幽霊が徘徊することになりそうだ。幽霊には足もないし、何処に出て来るかも判らない。とくにヨーロッパはまだ何が起きるかも不明であり、第2、第3のロイヤル バンク オブ スコットランド(RBS)が出てくるという可能性も残っているだけに始末が悪い。 
 ひょっとしたらまだ騒ぎが続きそうな気配となってきた。ハッキリしてきたのはどこの国も稼ぎ過ぎると国民感情の大逆襲を受けるということであり、責めている国民も結果としてツケが後で大きく回ってくるなど考えてもいないという恐ろしさである。アメリカ人はもう少し大人だと思っていたのだが、世論に左右される市場という状態がまだ続くとすれば当面は要警戒だろう。