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三原淳雄
 
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2003年10月31日
三原 淳雄

 
金持ちのカネを動かせ
 午前5時の日本を明るくするには
 

よく「夜明け前がいちばん暗い」と言われるが、直近の米誌「ニューズウィーク」
が「午前5時の日本経済」という記事を載せ、このまますんなり夜が明けるのか、
それとも視界は暗いままなのかと、強弱半々の書き方をしている。今回の不況の
特長は昔のそれと大きく異なり、職に就いている人・年金など収入のある人、も
ともと金のある人にとってはむしろ有難い不況なのだが、それ以外の人には極め
て厳しい状況となっていることである。インフレ下の不況ならたとえ失業しても、しばらくは売り喰いも可能だがデフレ下ではそうはいかない。失業して持ち家を手放すとすればむしろローン残債が残る、売り喰いは出来ないのでたちまち路頭に迷い、そこにつけ込んでヤミ金融などが狙ってくる。厳しい人にはより厳しい不況となっている。

 問題はこの本当に困っている人たちの数が少ないことである。喰うに困らない人がほとんどで、比率にすれば多分9対1ぐらいではないだろうか。「痛みに耐えて改革を」と叫ぶ政府の痛みの部分は、国民の一割程度が背負わされ、痛んでない層はむしろデフレを享受している。そうでなければお一人様1,200万円のツアーが即日完売するはずもない。リスクもとらず人助けもせず、何もしないでじっとしている方が得といういまの不況は、日本にとって初めての経験だし、カネが動かなければ景気もよくならない。ニューズウィーク誌が判断に迷うわけだ。

 だから政策もとんちんかんなものになる。いまの日本でカネを持っているのは個人の一部とごく少数の大企業だけ、国も中小企業の多くも借金だらけだし、銀行ですら貸せるカネはない。

 日本の夜明けを確実なものにするためには、金持ちのカネを活性化し市場に呼び込んでリスクに挑戦させるしかあるまい。

 中国が急速にのし上がってきたのも、外国のカネを呼び込んでどしどし投資させたからであり、その中国のしたたかさを日本も積極的に取り入れることだ。

 「白い猫でも黒い猫でも、鼠を捕る猫はいい猫だ」と、カネには色がついていないことに目をつけ、天敵の日本やアメリカからカネを引っ張ってきた中国の貪欲さに学ぶ点は多いはずだ。

 ヤミ金に走らざるを得ない自国民を救うためにも、政府は金持ちのカネを動員して経済を活性化する、そういうマニフェストを打ち出すのが本来の役目のはずだ。まずは株が下がれば買いたくなる政策から始めるといい。道路や郵政はそれからの話しである。