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2003年7月15日
三原 淳雄

 
動き始めるか現預貯金
欲深かマネーの出動か
 

  バブル期に一大流行語となったのが「赤信号皆んなで渡れば恐くない」だったが、実際には皆んなで赤信号を渡ったがために、その後13年にもわたってそのツケを払う羽目になってしまった。前回は主として株式と不動産がその主役だったのだが、人間とは懲りないもので、今回は債券で再び赤信号を渡ってしまったようだ。

 デフレ下では金利がどんどん低下するため、債券投資が相対的に有利になるし、たとえゼロ金利でも現金を持っていれば、物価の下落でむしろ価値は増す。

 そこで銀行は債券へ投資し、ケチな金持ちは現金で持つという選好が強まった結果、10年ものの国債の金利はたったの0.43%にまで下がったのがほんの一ヶ月ほど前のこと。

 当時はエコノミストたちも異常な低金利での債券投資も、デフレが当分続くのだから金利はまだ下がるので債券の価格はまだ上ると言っていたものである。

 ところがその後アッと言う間に1.45%まで金利は急上昇し、赤信号を皆んなで渡っていた連中が債券の値下がりで慌てふためく事態となった。

 債券の価格は金利と反対に動く、つまり金利が下がれば債券価格は上昇し儲かるのだが、0,43%の金利では、儲けるチャンスも最大で0.43%しかないはず。反対のリスクを考えればこちらは青天井なのだから、そんなに安心していい状態ではなかったはずだが、何故か全員が安心して買っていたのである。「強気相場は楽観のなかで成熟し、幸福のなかで消えていく」と言われるように、債券投資家はいまや安心とは程遠い状態だろう。一方キャッシュを貸金庫や自宅の金庫に貯め込んでいた渋チンの金持ちも、そろそろ危なくなってきた。自宅においておけば組織的な泥棒に半殺しにされ、丸ごと持っていかれるリスクがあるし、貸金庫では金利はゼロ。多少リスクを覚悟して株にでもしておけばよかったと、欲があるほどこれからは気になってくるだろう。

 いまの日本には金利がつかない現預貯金の形で個人だけでも780兆円もある。

 思わぬ株高で株を持っていない人も慌てただろうが、カネを持っている人たちはもっと慌てているはずである。多分これから真剣にセミナーや講演会に参加してくるだろう。この眠っているカネが株へと動くようになってくると、そこからが株高の本番、株とじっくり向き合う時がきたようだ。