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2003年7月09日
三原 淳雄

 
玉と石との選別がカギ
 

 市場は必ずしも予測通りには動かないものだが、それにしても今回の株高には驚かされた人が多いのではないだろうか。とくに大きな材料が出たわけでもないのに、あれよあれよという間に安値からは20%以上も値上がりになったのだから、呆気にとられるのも無理はない。しかし相場とは本来こんなものであり、毎度申し上げているように合理的な動きをするとは限らないのが相場の魅力であり魔力なのである。

 強気相場と判るのはいつの場合も後になってからであり、だからこそ「強気相場は絶望のなかで芽生える」と言われている由縁なのである。後講釈ではいくらでも理屈はつけられるが、その後講釈を如何に先にするかで勝敗が分かれるのが市場であり人生なのである。

 今回の上げ相場も強いて理屈をつけるなら「上がる理由がない」からである。上がる条件としては景気がよくなり企業収益が改善し、雇用も所得も増える好景気でなければならないと一般的には考えるだろうが、そこが市場の悩ましいところで、必ずしもそうはならないし、むしろ逆のことも起きる。

 今回はその典型的な例で、上がる理由がないから上がったのである。つまり不景気もどん底になり先が見えない、そこで政策としてどんどん金融を緩める。しかしそのカネも事業や消費に向かわず債券が買われるので金利は大きく下がる。金利が下がれば相対的に株式への選好も高まる。行き場のないカネが株式へ流れはじめ株価が上がる。今回は世界中を覆ったデフレ懸念によって一気に金利が下がったことが主因だろう。また経済の実体が悪い国の株価ほどよく上がるのもこの相場の特長だが、事実ドイツは日本以上に株など買える状態ではないはずだが、安値からはあっと言う間に30%以上も跳ね上がっているし、一方でこれまで絶好調だった中国株は冴えない動きになっている。さて問題はこの先どうなるかだが、市場はまず金余りによる金融相場がキッカケで上昇してきたが、次いで業績相場へとつながるかどうかを注目していくだろう。ここまでは売られ過ぎの反動高の面も強いが、ここからは玉と石とを選別しなければ、下手をすると元の木阿弥になるリスクが高い。業績と経営者にしっかり目を向け株価ではなく株の価値を選別することがポイントだ。