日本国債の格下げやデフレ対策の後退といった悪材料が出てきたにもかかわらず、株式市場は底固い動きを続けている。
当初はデフレ対策の名のもとに出てきた空売り規制のため、売り方が買い戻しただけで何れまた下がるという冷ややかな見方が強かったのだが、その後の市場の動きをみる限り、ことはどうやらそんな単純なものではなさそうである。
マクロでは依然として日本経済は少しも良くなっていないのに、何故株価は堅調なのだろうか。
市場には見えざる神の手が働くとアダム・スミスは説いているが、この底固い動きをもたらしている見えざる神の手はあるのだろうか。
あるとすれば何が神の手を働かせているのか、改めて市場の声に耳を傾ける必要がある。
考えられるひとつは市場には先見性があるため、マクロ面の悪材料はもうかなり先の分まで市場は折り込んでいる可能性があり、いまさら国債の格付けがイタリア以下になっても驚くことでもないといった調子で、予想される悪材料は既に消化しているのではないか。
またよく目を凝らして見れば、マクロ面での悪材料のなかにも、かすかではあるが底打ちの気配が輸出や生産に出てきつつあるようにみえる。
一方ミクロでは前稿でも指摘したが、企業の凄まじいばかりのリストラ努力が実を結びつつあるし、そのため今年の後半には収益が大幅に改善する企業も多いためかも知れない。
またデフレ下での企業のリストラ努力は企業内に豊富なキャッシュフローをもたらすことが予想され、このキャッシュは何れ自社株買いや選択と集中を目的としたM&Aに向かうだろう。
2月26日付けで「よく見れば、なずな花咲く垣根かな」という芭蕉の句をご紹介したが、市場は本格的に冬景色のなかでのなずなの花を探しはじめたのではないだろうか。
レーダーに反応しない飛行機を「ステルス」と呼ぶが、目に見えない「ステルス強気」相場が始まったようだ。
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