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2001年07月13日
三原 淳雄

 
北風と太陽
 

 「北風と太陽」という童話がある。 どちらが旅人のコートを脱がせることが出来るかと、北風と太陽が競うという話だが、北風がコートを脱がせようと冷たい風を猛烈に吹けば吹くほど、旅人はよりしかっりコートを握り締め、脱がせるどころではなくなってしまった。

 一方太陽はポカポカ陽気を送り続け、暖かくなった旅人はいともあっさりコートをぬいでしまい、太陽の勝ちとなった。

 小泉人気が異常に高いにもかかわらず株価が下がっているのは、一般の人気の原因がこれまでの自民党を中心とした体制の破壊や不良債権処理を期待する、いわば北風政策人気に対し、株式市場はリスクキャピタルに対する太陽政策を期待しているという違いなのでであろう。 「痛みを覚悟して不良債権の処理を」と叫べば叫ぶほど、市場には北風が吹くためみんな手をひっこめてしまう。

 買い手がいなくなれば株価が下がるのは当たり前であり、小泉さんが改革を叫べば叫ぶほど株も下がるという、なんともやりきれない事態となってしまった。

 つまり市場は北風を恐れているのである。

 不良債権の処理が避けて通れないことは確かだが、いまのままで強行されたら倒産や失業が増えるのは目に見えているし、当然株も土地も叩き売られる可能性もある。 そんなリスクがあるときに敢えて火中に栗など拾いにくる投資家はいない。 だから高支持率にもかかわらず株価は安くなるのである。

 ここで政府が考えるべきことは市場に太陽を呼び込む政策である。 それにはこんなリスクの高いときにそれでも株や土地を買ってくれる人たちに対して優しい税制を導入すればいい。 いま日本の金融資産の半分以上を65歳以上の高齢者が持っているのだから、この人たちのお金を有効に動かす政策、つまり相続税や贈与税を改正すれば、お金を貰った子供や孫たちはどんどん使うだろうから消費も活発になるし、税収も増えるから財政再建も痛みなく出来ることになる。

 またこの時期に株や土地を買ってくれる人には将来の売却益の税率をゼロにするのもいい。 やはりリスクにはリターンをセットしておかなければ、お金は動かないのである。 しかもこれには国の金など一銭も必要としない。 単に税制だけでいいのだから国民にとっても悪い話ではあるまい。

 土地も株も買えない人にしてみれば、金持ちばかりが得をするように思えるだろうが、正直な話いつの時代も金持ちしかリスクは取れないのであり、彼等がリスクを取るからこそ経済は前を向いて走れるのである。 腹も立つだろうがここは非常時なのだから辛抱すれば、いずれ景気も立ち直って必ず全員に何がしかのメリットが訪れるはず。 ここは取り敢えず金持ちの金を動かすことを考えようではないか。

 先週竹中大臣にも会って市場に優しい政策の導入を提言してきたが、彼もやりますよと答えてくれているので、選挙明けがどうなるかたのしみである。