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2001年06月29日
三原 淳雄

 
市場は常に合理的ではない
 

 まことに当たり前だが市場は売り手と買い手で成り立っている。

 その最も判り易い例が株式市場だろう。 売りが増えれば株価は下がるし、その逆も同様である。 そこで改めてお考えいただきたいのだが、市場には様々な心理が働き、時として思わぬ価格がつくことも多いということである。

 世の中に悲観色が強くなれば、当然売り手が増えるし買い手は引っ込む。 不安に駆られている売り手は何が何でも売りたい、またはどうしても資金が必要といった事情に迫られているので、その価格が適正かどうかより、とにかく売ってしまいたい。

 そのため時として不当に安い価格で売買が成立することが多くなる。

 その好例がいまの不動産市場だろう。

 金融機関などの不良債権の処理を見ていると、不良債権の総額に対して十分の一といった飛んでもない価格で処理しているケースもある。 つまり楽観に満ちた時にはいまの十倍の値がついたものが、悲観に変わると十分の一になってしまうのである。

 そしてあれだけ土地が足りないと大騒ぎしたのに、いまや誰も買わなくなって大余りとなっているのが不動産市場である。

 株式市場にもどうやら同じ現象が出てきつつあるようだ。 いまや高値の十分の一前後にまで落ち込んだ株はごろごろしているし、それでもまだ下がると思われているので上げる気配すらない株も多い。

 市場経済では全ての価格は市場が決めるのがルールだが、その市場もいつも合理的で効率的ではないため、人心は大いに迷うからである。 しかし、長期的にみると市場はちゃんとその不合理な動きを調整するのであり、買われすぎや売られすぎは時間とともに修正されていく。

 市場を測る尺度には様々なものがあるが原点に帰って企業の資産と時価総額の比率、つまり一株当たりの資産と株価を調べてみると、いまは何と全上場企業のうちの約三分の一近くが一株当たり資産より株価が低い。

 新しく会社を創るより買い占めた方が安上がりなのである。 この9月からは時価会計が導入され、より正確な資産評価が行われる。 そろそろ市場の不合理な動きを利用し、売られすぎを物色すべき時なのではないだろうか。