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2001年05月10日
三原 淳雄

 
まずリスクキャピタル優遇税制を
 

やや旧聞に属するがハリソン・フォード主演の映画に「いまそこにある危機」というタイトルがあったことを思い出した。

このタイトルこそいまの日本にぴったりだろう。 何せいまそこにある危機が現実のものになろうとしているからである。

 いつもはのんびりしていて、そのうち何とかなるだろうと考えているだけでいつもなんとかなってきたことに馴れていた日本国民も、流石に今度ばかりは危機感をつのらせたのか、小泉内閣に圧倒的な支持を寄せている。 が、果して小泉さんは期待に応えることが出来るのだろうか。 所信表明演説を聞く限りでは、首相個人が感じている危機感と、国民のそれとにはかなりギャップがあるように思えてならないのである。

 その証拠に所信が表明された途端に、株式市場からは急速に熱気が冷めてきはじめた。

 期待だけで上げてきた相場だけに、期待通りにはなりそうもないと、やや疑心暗鬼に陥りつつあるのだろう。

 改革には痛みが伴う。 しかしそれでも改革は行わなければならないという首相の気持ちはよく伝わったのだが、問題はその痛みがどんなもので、改革の後の日本がどんな姿に変わるのかについての説明がない。

 市場経済の何たるかがよくお判りでないのでは、といった懸念すら生まれつつあるのではないだろうか。

 不良債権の処理が必要なことはもう国民の殆どが理解しているのが、だからといって不良債権さえ処理すれば、経済は再建され全てが万々歳となるわけではない。

 不良債権をどう処理するのか、そのための市場の整備は税制を含めてどんな方法で行うのか。 そして痛みに対してはどんな対策を用意するのかが全く見えてこない不安の方を市場は心配したのであろう。

 新内閣に期待出来るとすれば、これまでの失政にかかわった宮沢氏や橋本氏といった責任者たちが閣内に一人も居なくなったことである。 そのため過去は過去と切り捨てて、反省すべきは反省し、行うべきことはさっさと行える内閣に衣替えして人心一新となった点は今後大いに希望が持てる。

 米国をはじめ世界経済もスローダウンしている折でもあり、日本には自力でしか這い上がる道はないのだから、思い切ったリスクキャピタル優遇策を出すことからスタートして欲しいものである。